1.家庭でのコロナウイルス対策3本柱とは?
家庭でできるウイルス対策は、主に次の3つとなります。
・家の中に持ち込ませない
一番に行いたいのは「家の中にウイルスを持ち込ませない」ということ。外出したとき、知らない間に衣服や顔、手などにウイルスがついたかもしれません。これらを家のなかに持ち込まないようにします。
まず、帰宅したらすぐに家族全員が「うがい手洗い」を心がけましょう。消毒液を玄関内に置く方法は一般的ですが、玄関の「外」に消毒液を置き、そこでまず手を消毒すれば、玄関ドアを汚れた手で触らずに済みます。さらに、帰宅後すぐにお風呂に直行してシャワーを浴びて着替える行動はベストといえるでしょう。では、一つずつ対策を見ていきましょう。
使用した不織布マスクは、室内に入る前に捨てる
マスクをしたまま、室内に入るのは避けましょう。マスクの表面には新型コロナウイルスだけではなく、インフルエンザなどさまざまなウイルスや菌が付着している可能性があります。玄関前にフタのあるゴミ箱をおいておき、そこに捨てるクセをつければ室内にウイルスを持ち込むリスクを減らせます。
家に帰ったら衣服をすぐに着替える
ウイルスがついている可能性のある衣服は玄関先で着替えたいものです。コートやマフラー、ダウンなどすぐに洗濯できないものは、玄関に入る前に脱ぎ、玄関近くの事前に決めておいた各自の置き場所で保管するようにしましょう。
うがい・手洗いをする
帰宅したらすぐに「うがい手洗い」を励行しましょう。手洗いは指の先から手の甲、手首までセッケンをつかってできれば30秒。まず手のひらを合わせてもみ込み、次に手の甲や指の付け根まですり込むようにこすります。手のひらで指先や爪の先を泡立てるようにこすり、双方の指の間にもすりこみます。親指と手のひらをねじるように洗い、手首にもすり込みます。「ハンドソープで10秒または30秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎ」をすると、残存ウイルスは「数百個」(約0.01%) になるとされています(*)。時間がわかりにくいので、「ハッピーバースディ」の歌を2回繰り返すと、ほぼ30秒になります。
*森功次他:感染症学雑誌、80:496-500,2006
http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0800050496.pdf
手指の消毒
手洗いができない場合、アルコール消毒液で手指の消毒をしましょう。このとき濃度は70%以上95%以下のものを選びます。ポイントはアルコールが蒸発するまで、最低でも15秒以上、行うこと。時々消毒液を手につけただけ、あるいは、ささっと数秒手のひらをこするだけで終わってしまっている人を見かけます。けれどもこれではウイルスは死滅させられません。15秒程度をかけて手や指全体にすり込むことで、手についたウイルスの「膜」が壊れて、無毒化します。
そのためにも、まず片方の手のひらのくぼみにたっぷりと消毒液を取ります。「小さな池」をつくるつもりの量にしましょう。そして、指先と爪を「池」につけてすり込みます。指先から行うのは、指は、いろいろなものをつまんだり顔をさわったりするからです。最初に手全体にもみこむと、指先を消毒する前にアルコールが蒸発してしまいます。次に手のひら、手の甲、指の間、親指、手首とすり込んで自然乾燥させます。この流れで15秒は自然にたっているはずです。
日中はできるだけ換気をする
換気をこまめに行えば、ウイルスが室内にとどまるリスクは減らせます。できれば窓を30分に一回、数分間開けて室内の空気を入れ替えましょう。
各部屋の窓を3cmから5cm程度開けっぱなしにして置き、風の通り道を作る方法もあります。室内全体の空気を入れ替えるためには、各部屋のドアも開けておきます。一つの部屋を換気するなら対角線上にある窓を開けます。
また壁にある吸気口は開けておきましょう。窓を一つだけ開け、換気扇を回して室内の空気を排出する換気も適していますが、このとき、給気口が閉まっていると、いくら換気扇を回しても外から新鮮な空気を取り入れづらくなります。これでは、内部の空気が入れ替わりにくいのです。
さらに、24時間換気があれば、常時、稼働させておきます。この際も給気口は開けておきます。
・屋内のウイルスを減らす
知らないうちにウイルスを室内に持ち込んだとしても、そのウイルス量を減らせば、家庭内で感染するリスクは減らせます。
大事なのは「換気」。室内に「24時間換気システム」が導入されていれば、必ず稼働させておきましょう。システムがなければ、複数の窓を3~5cm程度常に開けて、風の通り道をつくっておきます。寒い時期に「窓を開けっぱなしにするのがきつい」という場合は、30分から1時間に1回、5分程度、すべての窓を開けて空気の入れ替えを行いましょう。
注意したいのは、換気口があれば閉めないこと。換気口は外からの空気を取り込む大切な口だからです。換気扇を使用しているときも、外からの空気を取り入れる口になります。
できるだけ換気をする
先ほど換気の方法をご紹介しましたが、これから冬になると換気がおっくうになるのではないでしょうか。窓を開けて外の空気を取り入れると、室温が下がりすぎて寒くなるだけでなく、ヒートショックのリスクが高まります。
では、どうすればいいのでしょうか。換気をしながらヒートショックを避けるには、室温18度、湿度40%以上を維持するようにして、一方向の窓を数㎝開けっ放しにして常に換気する方法を実践しましょう。湿度と室温を維持するために、窓を開けるスペースはこまめに調節します。そのためにも、温度湿度計と、加湿器を準備しておきます。
部屋の温度を下げずに換気をするために、給気口や窓のそばにつけっぱなしにしたオイルヒーターやファンヒーターなどの暖房器具を配置します。こうすれば、数㎝窓を開けておいても、外から入る空気がいったん暖房器具で温められます。暖房器具がない場合は開けた窓の前に「ついたて」など、直接外からの風が当たるインテリアを置きます。また、エアコンを使うなら下向きに風が来るように設定します。暖かい空気は上にたまりやすいからです。そして、扇風機やサーキュレーターを天井に向けて空気を循環させれば、上の暖かい空気が下に降りてきます。
寒さ対策として、使っていない部屋を利用する「2段階換気」もあります。
たとえば、リビングだけを換気したい場合。まず、使っていない部屋の給気口や窓を少し開け、その部屋を通じて外の空気を取り入れます。いきなり冷たい空気がリビングに入るわけではないため、使ってない部屋に入った空気は少し温まります。リビングまでのドアや引き戸を開けて、その空気が流れてくるようにします。リビングのそばにキッチンがあれば換気扇を使ってリビング内の空気を外に排出します。リビングのエアコンは18度を下回らないように設定します。
取っ手、ノブ、電気スイッチなどの共用する部分を消毒する
家族が触れるドアノブや取っ手、電気スイッチ、テーブル、リモコン、冷蔵庫、カギなどは、定期的に消毒するようにしましょう。近くに濃度70%以上のアルコール消毒液か、以下のリストに示されている界面活性剤(*)でふき取ります。
拭く際には、使い捨てできるキッチンペーパーなどに消毒液や界面活性剤を染み込ませてから。テーブルなどは、一筆書きの要領で、右から左、そのまま左から右と、同じ個所に戻らないように手前から奥に進めるようなイメージでふき取ります。往復すると汚れが残ってしまいます。
また、スプレータイプの消毒剤などを直接、テーブルやドアノブなどに吹き付けてからふき取るのはやめましょう。万一、ウイルスがついていると、吹き出した空気の力でウイルスが室内に飛び散る可能性があるからです。
*独立行政法人製品評価技術基盤機構「新型コロナウイルスに有効な界面活性剤が含まれている製品リスト」
https://www.nite.go.jp/information/osirasedetergentlist.html
汚れたリネン、衣服を洗濯する
外出先から帰ってきたら、着ていた衣服はできるだけ早く洗濯するようにしましょう。シーツや枕カバーなども定期的に洗いましょう。上記の独立行政法人製品評価技術基盤機構で明記されている洗剤を使うようにしたいものです。
トイレでは、蓋を閉めてから水を流す
トイレでは、水を流す前に必ずフタを閉めるように家族一人ひとりがクセをつけるようにしましょう。もし、家族の誰かが無症状感染者であった場合、水を流す際に、ウイルスがトイレ内に飛び散ってしまう可能性があるからです。それぞれが使ったあとにレバーや便座、ペーパーホルダーを拭くクセをつけるのもよいでしょう。
ゴミは密閉して捨てる
ゴミを捨てる際には必ず密閉するようにします。たとえば、鼻をかんだらすぐにその人がビニル袋に入れ、一つ結びでしっかり口をふさいで捨てるクセをつけます。日常のゴミ出しも口をしっかり結びましょう。
加湿器を使う
湿度は40%以上、できれば50%以上を維持しましょう。ウイルスは湿度が高いほど活性化しづらくなります。加湿器と湿度計で室内の湿度を管理しましょう。
・ウイルスとの接触を減らす
感染しないためには、室内にウイルスがいたとしても接触を減す行動が大切になります。具体的にみていきましょう。
食事前の手洗いや手指の消毒
手はいろいろなものを触ります。ときには無意識にそのまま顔を触ってしまい、ウイルスを体内に取り入れやすくしてしまいます。さらに、食事中は手を口元にもっていったり、鼻や口を触ったりすることが自然と多くなります。食事前には必ず手を洗うようにしましょう。また、外食などですぐそばに洗面室などがないことがあります。濃度70%以上のアルコール消毒液の小さなボトルを持ち歩き、手指を消毒してから食事をするようにしましょう。
さらに、食事の後にも手洗いや消毒をするクセもつけたいもの。万一、共用の食器にウイルスがついていることがあるからです。食後にその手で目や口、鼻を触ることは十分、ありえます。こういった食後の手洗いは盲点といえるでしょう。
できる限りテレワークを取り入れ外出を控える
新型コロナウイルスは、人から人を介して広がっていきます。究極論でいえば、無人島に家族だけで暮らしていれば、かかる可能性はゼロではないでしょうか。しかし、それは現実的ではありません。
ウイルスは、1回の咳で約700個、1回のくしゃみで約4万個発生(*)するといわれており、最近では、空気中の小粒子や飛沫が浮遊している状態のなかにいて、空気を吸い込むマイクロ飛沫(エアロゾル)感染も指摘されています。
エアロゾル感染を防ぐには、マイクロ飛沫を吸い込まないことですが、外出し、電車に乗って会社や学校に行く、買い物をする、など、同じ空間で人との接触がある限り、ゼロにはなりません。できるだけ外出を控え、勤務先に制度があるなら、テレワークで業務を行うようにしたいものです。
*)Fernstrom A, Goldblatt M: Aerobiology and its role in the transmission of infectious diseases. J Pathog. 2013; 2013: 493960.
買い物などは最低限に
人との接触を減らすことが一番の感染対策ではありますが、日常の買い物は避けて通れません。けれども、ここで、できるだけ買い物に出かける回数を減らすことができれば、リスクも減少します。一部を宅配に変えて、本当に必要なものだけを買う、店舗内での滞在時間を短くする、セルフレジなどを利用する、という方法があります。
宅急便は置き配にする
人との接触を減らすために、宅配を利用する方が増えています。しかし、受け取りの印鑑を押す際には、配達の人と接触してしまいます。このため、できるだけ、宅配は玄関先に置いてもらう「置き配」を選びましょう。玄関先に置き場所を作っておいて「ここに置いてください」と書いておいたり、宅配ボックスを配置したりするのも一法です。ただ、冷蔵便や冷凍便は長時間置けないので、すぐに取り入れるようにしましょう。